図書館系MLで流れてきた論文『公立図書館における書籍の貸出が売上に与える影響について』を読んで その1

図書館系MLで流れてきた論文
『公立図書館における書籍の貸出が売上に与える影響について』
http://www3.grips.ac.jp/~ip/pdf/paper2011/MJI11004nakase.pdf

目を通すのも礼儀かと、ざっと読んでみたのだが、専門家(経済学系)が専門家に向けて書いたもののようで、門外漢にはいささか辛い論文であった。
それはそれ、せっかく専門家が公共図書館をネタに書いた論文であるので、紹介もかねて、考えたことなどを書いておく。

論文を読むためにネットで収集した予備知識。
「最小二乗法について」http://szksrv.isc.chubu.ac.jp/lms/lms1.html
計量経済学http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%88%E9%87%8F%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6
計量経済学http://www.geocities.jp/acenakamura/keiryou.htm
「回帰分析」http://www.econ.nagoya-cu.ac.jp/~kamiyama/siryou/regress/EXCELreg.html
「一般化最小二乗法と識別問題」http://hnami.or.tv/d/index.php?%B0%EC%C8%CC%B2%BD%BA%C7%BE%AE%C6%F3%BE%E8%CB%A1%A4%C8%BC%B1%CA%CC%CC%E4%C2%EA
ということで、専門的な批評は不可能!!!なので、疑問点、考えたことなどを上げておくことにする。詳しい人に教えていただければ幸いである。
(ちなみに論文末尾にその名前が現れる岡本薫教授(主査)を検索していたら、池田信夫 blog(旧館)で、ボロクソに書かれていた。とほほ。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/590d731afa789e69fda0420646fdcdcf


さて、全体で7章からなるこの論文、3章までは基礎づけの部分で4章の「モデルによる考察」からがまあ、本題ということで、面白くなってくる。
本を買うこと、借りることについて、あらためていろいろ考えさせられることになった。ありがたいことである。

うーんとうなったのが
『図書館で書籍を借りることは、長くても数週間程度の限られた期間に中古本を一時的に占有するに過ぎないので、同じ者にとって、
購入した場合よりも便益は下回ることが一般的である。』
というくだり。
私の結論をいえば、購入した場合の便益が借りた場合の便益を上回ることがあるのは本に書き込みをする必要がある場合のみ(あと、とにかく早く読みたい)ではないかというものだったのだが、まあいくつか考えたことなぞあげてみる。

例えば『地球の歩き方』といった旅行案内本。
ポーランドへ2週間の予定で旅行をすることになったA氏にとって、『数週間』『中古本』を借りることで目的は十分果たすことができる。たぶん賢いA氏は必要な地図だけコピーをして、経路を書き込んだりするだろう。便益が下回ることはほとんどない。

A26 地球の歩き方 チェコ/ポーランド 2012~2013

A26 地球の歩き方 チェコ/ポーランド 2012~2013

たとえば私にとっての漱石
私は漱石の小説は、ほぼ購入してあるわけだが、ちょっとした細かい部分を確認したいときは、青空文庫を利用するし、本気で読み返そうというときも、図書館から借りてくることも多い。引越ししたときにダンボールに詰めたまま、押入れに眠っている本も多いので、捜すよりは借りるほうが手っ取り早いのである。本を購入してみずから所有するということは維持管理のコストを自分で賄うということで、これはあんがい馬鹿にならないものだと思う。私は図書館は私に必要な本の保存庫とみなしているが、これは図書館の本質的な役割(資料の収集と保存)からいってもあながち、まとはずれな考えではあるまい。

また半分都市伝説みたいな事実として、たとえば「アラビア語」とかの日本人にとってはマイナーな言語の本を、あるいはプラトンなどの哲学書の古典を、借りては返しまた借りるを繰り返し10年以上にわたって占有する強者というのは結構いたりするものである。図書館の本が一時的にしか専有できないというのは、おおむね予約多数の人気本に見られるだけのはなしである。

唯一の購入の強みはスピードではないか。発売日に読みたいと思ったら、これはもう書店で購入するしかない。ということなんだけど。

ああ、人はどうして本を購入したりするのでしょう??