夢の跡

ちょっと古い資料なのだけれど、図書館職員が情報を示し、運営の改善案まで踏み込んでいるところが、感動的かつ実際的なので、リンクを張っておきます。
一部図書館関係者?の間では有名なものなのだけれど。
http://homepage3.nifty.com/riyosha/betterlib/kaikakuan-eturan2.html
練馬区の図書館をより充実させるために
練馬区職員労働組合図書館分会・練馬区立図書館協力員労働組合
2004年10月 』

結果として、この改革案は採用されず、カウンター委託のみならず、指定管理までが導入されることになったのですが、民間運営に反対する基本的なスタンスは、この時点で良く示されていると思います。基本的なスタンスは今もそれほど変わりがないようだから。


すでに清掃や建物・設備の保守などの維持管理業務や資料の装備、データ作成などは委託されています。また現在職員が行っている業務にも、委託できるものがないとは言えません。しかし先にも述べたように現在他の区で行われているカウンター業務委託は、行うべきでないと考えます。その問題点をあげるとつぎのとおりです。
(1)
利用者と図書館の接点であるカウンターが委託されると、利用者の声や要望が図書館に届きづらくなり、運営やサービス内容への反映ができなくなる。
(2)
本来一続きである図書館業務を無理に分離することにより、それぞれの業務が円滑に遂行できなくなる。
(3)
委託は単年度契約であり、入札等で毎年業者が変わることもある。また給与などの労働条件の低さから働く人が定着しづらい。そのためそれぞれの館の資料と利用者に精通した職員が育たなくなる。
(4)
利用者の秘密、プライバシーの保護が保障できない。≫


≪資料の装備、データ作成などは委託されています。≫このあたりが、いささか、あらかじめ「底が抜けて」いたというところですね。(このあたりのTRC比率も示してほしかった)

(1)に関しては、そもそも、委託以前に、市民、(区民?)の声や要望が運営やサービス内容に反映されていたのかという疑問符がつきますね。どのくらいの利用者率が当時あったのでしょう。50パーセントを超えていたのなら、声や要望が運営やサービス内容に生かされていたんだなと私も納得しますが。
(2)に関しては、ほぼ同意。ただそれじゃあということで、指定管理が導入されたのだとしたら、じつに悲劇という気がします。
それとも、指定管理は、むしろ賛成だったのだろうか?
それとも、カウンター委託以上のことが起こるとは想定外だったのだろうか。
(3)に関しては、区の正規職員の移動の問題がどうしても付きまとう。改革案でも、正規を減らして、非常勤を増やすことで、≪それぞれの館の資料と利用者に精通した職員が育≫てようとするアイデアが示されていますが、民間と長期契約してもいいはず、という考えもありうるし、それ以前の練馬区図書館が≪それぞれの館の資料と利用者に精通した職員≫を育てることを本気で考えてこなかったという(公務員の職場を転々と移動するという勤務形態が公共図書館の理想と折り合いが悪い)こと自体が、実に痛い気がします。
(4)は、ただの差別です。利用者の秘密、プライバシーの漏洩は、公務員、民間人双方に存在したし、しますし。その事実を無視して片方を貶めることは、根拠に基づかない、推定、あるいは断定であり、端的な差別です。(公立校の先生が私立校の先生に同じことを言ったらと考えると、恐ろしくさえなる)



それはそれ、
現在の予算(2004年度)のところは、一般的な自治体直営の図書館運営のモデルケースとして、捉えることもできるのではないでしょうか。
お住まいの地域が直営型であれば、今でも参考になると思います。

例えば、
高額の人件費   72.1% 15億3996万円 と
低額の資料購入費  7.6%   1億6148万円

人件費を10分の1減らして、そのぶんを資料費にまわせば、資料費が一気に2倍近くになるというあたり。
もちろん、直営で働く公務員や、それに準じる人の給与水準は民間に比べて高めなので、10パーセント減らしても、中流の水準は維持できる人が多いと思われます。
常勤職員 (給料+手当+共済費 151人) 13億0909万円
これって平均800万円だよね。
(図書館協力員はややきついかも)
ある意味で「もっと本を!!!」という市民の声や要望は、運営やサービス内容に生かされてはいなかった、あるいはいない、ということですね。
逆にいえば、市民の支持をうるには、10%給料を減額するだけで可能かもということだ。
大阪府橋下知事のアイデアのひとつがこのあたりだと思う。

それはそれ、
少なくとも、情熱的で、図書館愛に燃えた人間が創りあげた改革案が発表されてから5年半。

少し追跡調査でもしてみようかしら。

BGM 中島みゆき『時代』
http://www.youtube.com/watch?v=qr6AU6bvEzw&feature=related