公共図書館における民間活力導入。あるいはただの戦国絵巻

こちらのかた(Tohru’s diary)
http://sakuraya.or.tp/blog_t/index.cgi?field=5
の「読み」は基本的に当たっているのではないかと思った。

このままいけば、他業種から参入した、管理委託業者は、遠からず撤退していくのではないかと思う。
老人介護事業に進出したグッドウィル同様、ビジネスチャンス!とばかりに進出したのだから、これはあまりにひどい、儲からん、ということになれば、手を引くしかないだろう。
つまり失敗ということだ。

なぜ失敗するかといえば、これは、「反対派」がいうとおり、公共図書館がそもそも利益を上げるのに向いてないということもある。
が、ほかにもいくつか理由があるように思う。

もともと、自治体が抱え込んだ巨額の借金と、今後税収が増えるとは思えない(いわゆる右肩上がりという幻想の崩壊)という経済状況下で、とにかく経費を抑えたいということで、始められたのが、民間運営ということの実際だったと考えられるのだが(注1)、今までと同じ仕事を、ずっと安くということでは、最初から無理に決まっていた。(どう考えても無茶だ、なんだか笑ってしまう。サルに仕事をさせるわけじゃないんだから)

本来なら(理想の民間活力導入?)、民間の経費感覚によって、無駄な仕事は削り、大切な仕事を重点化するといった経費の最適化・効率化をともなった、「図書館改革」が民間導入の時点で必要だったのだ。
しかし、Tohruさんが詳しく書かれているように、今現在の民間運営は、たとえて言えば自治体・公務員の書く設計図どおり、民間が施工しているのと変わらない。
そして設計図を書く人は、無駄な高速道路や新幹線やつくり、無意味に豪華な保養所を立ててきた、あのお役人と、基本的には変わらない人たちなのだ。
有るほうが無いより、するほうがしないより、という「正論」主義者で、経費に関していえば、なければ借金すればという考え方を持っている、つまり開始時点の困難の半分を作り出した張本人たちなのである。

我々は彼らの無意味にして有意義なアイデアに疲弊させられている。
我が愛すべき図書館の、愛すべき館長(公務員)の口癖は、人を増やせばいいじゃない、だそうだが、それはできないのさ。だって民間には、お金がないんだもの。

ということで、愚痴めいた話になったが、ここまでが前ふりで、このような状況下で、生き残るのは、異業種からの参入組ではない、Tohruさんが注目するTRCだろうというのが本題なのだ。

理由はTRCは、民間委託、指定管理といった部門で利益を上げなくても、企業全体として、利益を確保、拡大することができるからということなのだ。
もともと、図書館の本の流通を担ってきたTRCは、業界に強固な一角を占めている。(そのことはこの前『ユリイカ!!TRC』)で書いた)
ソニーのPSなどゲーム機の世界では、本体が、原価割れでも、全体として、利益を確保しうるビジネスモデルを採用しているらしいが、同様に、民間委託、指定管理部門は多少赤字でもと、TRCは考えているのだと思う。

この先、TRC独占化のメリット、デメリットについて考えていきたい。


注1
経費削減ありきの改革ではなく、といった言葉を、「市民派系」の図書館運動家が口にするが、これは間違っていると思う。経費削減はもはや至上命題である。これ以上の負債を今後産まれて来る世代に押し付けてはいけないということは、市民を名乗る人間が最低限持つべき倫理観だと思う。『他者を手段としてのみならず、目的として扱え』

PS
図書館の現状について関心のある方に、上記のサイトをお勧めします。状況を分りやすく冷静に分析されいると思います。というか、読んで私も勉強しているのだ。
Tohruさん、こんなところでなんですが、いつも参考にさせていただいています。謝謝。