『図書館の自由に関する宣言』再考

昨日、こんなメールを日本図書館協会に送信してみた。

船橋市西図書館の蔵書廃棄事件について、『図書館の自由に関する宣言』と繋いで、調べているのですが、いくつかわからないことがあるので、お尋ねします。

 「図書館の自由に関連した声明・見解・要望」を見るかぎり、2007、5,20の対応報告が、この事件に関する最終報告になっているようですが、この報告だけでは、日本図書館協会がこの事件の当事者A氏に対して、どのような対応をしたのかがわかりません。
受理を保留した「退会届け」はその後、どのように処理されたのですか?
詳細な情報が記載された資料などありましたら、レファレンスとして教えていただけると助かります。」

少なくとも、この10年というスパンで、『図書館の自由に関する宣言』と『倫理綱領』を、もっともハードに踏みにじった事件のひとつだと思うから、ある程度ほとぼり?がさめたところで、じっくり検証をしてみたいという気持ちがあったから、メールで問い合わせてみたのだ。

そしていささかこの問題と関わって、私を苛立たせるのは、例えば豪石さんというかたの、『図書館の自由宣言再び』と題されたこういうブログ。

≪図書館の自由宣言と言うものがあるのですが、それを逸脱するような出来事が自分の身の回りだけでなく、他にもあるようです。

第一に、指定管理制度ですが、これもやること自体に自由宣言に反するのではないでしょうか?過去に、請け負っている会社の社員が、利用者の貸出した内容なんかを他に号外して機密事項が漏れたということで問題になりました。

http://neigerlibrary.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-7640.html

船橋市西図書館の蔵書廃棄事件が、市の職員(公務員図書館員)によって起こされた事件であったことを、豪石さんというかたは、お忘れになったのだろうか。

図書館の自由に関する宣言』は

第2 図書館は資料提供の自由を有する
 図書館は、将来にわたる利用に備えるため、資料を保存する責任を負う。図書館の保存する資料は、一時的な社会的要請、個人・組織・団体からの圧力や干渉によって廃棄されることはない
第3 図書館は利用者の秘密を守る

と記している。
であれば、機密情報が漏れたことで、指定管理制度が『自由宣言』に反する(第3に抵触する)というのなら、船橋市西図書館の蔵書廃棄事件も『自由宣言』に反する(第2に抵触する)ものであることは間違いなく(それはJLAも認めている)、ひとつの事件だけを取り上げて、≪これ(指定管理制度)をやること自体≫が自由宣言に反するのなら、公務員による図書館運営も、自由宣言に反するということになるだろう。

しかも先日の東金図書館の事件を豪石さんというかたは、もうお忘れになったのだろうか。

おおむね人のすることだから、公務員、民間人問わず、時として事件が起きてしまうのは避けがたい。官民問わず完璧な人間集団、組織などありえない。
このような、過去の事実に基づかず、民間管理者ばかりが事件が起こしているかのような印象を与えるブログを書くことは「中傷行為」であり、民間人は、とても信用できないと言うのであれば、それは根拠に基づかない「差別」でしかない。


「自由宣言」はその前文ともいえる部分に
『 すべての国民は、図書館利用に公平な権利をもっており、人種、信条、性別、年齢やそのおかれている条件等によっていかなる差別もあってはならない。』と謳っている。
この文章から『図書館利用に公平な権利をもっており』を取り除けば、むしろより大きな枠組みとしての、『憲法』で保障された、すべての国民の『基本的な人権』という精神と、重なり合うのではないか。

豪石さんというかたは『自由宣言』を片手に、憲法によって保証された民間系図書館員(そこに私も含まれる)の人権を侵害している。
これは実に奇怪でいびつでゆがんだ状況ではないだろうか。

日本国憲法が、真に実質的な効力を持つ日が来ることを願ってやまない。