子供の読書指導を思う

『ためしに、私たちが力を引き出そうとしている子どもについて、その本の読み方を分類して、表にするとしたらどのようになるでしょうか。文字をたどりたどりする読み方、不得手な読み方、並みの読み方、表現力の豊かな読み方(表情をつけて音読する)、楽しみながらの読み方、思考を働かせた読み方、批判(クリティック)する読み方、解釈(インタープリーティング)する読み方…………』
       『読書へのアニマシオン 75の作戦』P30
この分類は子どもにのみあてはまるものではなく、本の読みかたの、一般的な分類、あるいは発展段階でもあるように思います。読書へのアニマシオンは、子供を対象にした方法であるのみならず、大人も含めたより広く確かな可能性を秘めていると思われます。

ところが実際には、読書へのアニマシオンは、日本に紹介される過程で、いささか迷走してしまったことも否めません。
読書へのアニマシオンの日本における先駆的紹介者のひとり有元秀文氏はいつのまにか、悪名高き?「言語力検定」にかかわって、その「公式ガイド」を出版するにいたりました。 どうやら有元氏にも読書へのアニマシオンが当初の方向性からずれってしまったという思いもあるようです。

もともと『読書へのアニマシオン 75の作戦』には、それが行われる場所として、学校の教室よりは、公民館や図書館など、子供が主体的に参加できる場所(逆に言えば参加したくなければ参加しなくても場所)が望ましいとされていましたが、日本において、その多くが学校の教室で、授業時間に行われること多いわけです。もちろん実際的に子供たちをアニマシオンに参加させようと思えば、強制力のある学校で行うことが実際的であったということは無理からぬことではあるのですが。

現在の子供の読書指導が、ほぼ『文字をたどりたどりする読み方、不得手な読み方、並みの読み方、表現力の豊かな読み方(表情をつけて音読する)、楽しみながらの読み方』まででストップし、そこからの『思考を働かせた読み方、批判(クリティック)する読み方、解釈(インタープリーティング)する読み方』がほとんどおざなりにされている印象を与えるものである以上、『読書へのアニマシオン』の可能性を改めて、問い直すことは、有効なひとつの方法であるように思います。そしてそれは学校よりも市民図書館において、より効果を発揮しうるものだと考えられます。
市民図書館がその存在価値をアップさせる手段として、積極的に取り組んでもよいのではないでしょうか。

PS
こういう言い方もあれですが、『表現力の豊かな読み方(表情をつけて音読する)』を大人が読み聞かせと称して実践するのは、大人の読書教育には有効でしょうが、子供に対して、どうなのか。子供の読書力の向上を目指すなら、あくまで主役は子供であるべきではと思うのですが。


読書へのアニマシオン―75の作戦

読書へのアニマシオン―75の作戦