ネットで実名活動をするときの実にささやかなリスク

しばらく前のことだが、職場で、同僚に声をかけられた。
「○○さん、『水死』を一番に予約していたでしょう!」
ウキャー、ダダ漏れじゃん、私の秘密

水死 (100周年書き下ろし)

水死 (100周年書き下ろし)


さてさて、『水死』の予約情報からたどったのか、『私』の予約情報からたどったのかは不明だが、同僚(初老の女性)の行動は、やはり問題があるといわねばならないことだと思うのだが(利用者として図書館を利用する限り私もまたひとりの利用者なのだ)、そのあまりの屈託のなさに、私はこのことにかんして、いまのところ、何も言えずにいる。
『水死』などという陰気くさいタイトルの本を発売前に予約して(それも区内で一番!)まで読む人間として同僚の目に映る「私」に、ある恥じらいの気持ちさえ感じて、彼女になにごとか、はなしをする気になれない…


もちろん現在の図書館で働く限り、同僚のそして利用者の読書傾向に完璧に無知であることは難しい。本に予約レシートをはさんで、利用者の名前のアイウエオ順に棚に並べていくのだから。もちろん貸し出し手続きのとき、タイトルから完全に目をそらすことなどできない。


ふと思ったのだが、たとえばある組織が、長期的にある人物の行動を監視するとする。
特に読書傾向を監視するとする。ある人物が公共図書館愛好者で、ひんぱんに資料を借り出すタイプなら、スパイをひとり、パート・アルバイトとして、指定管理・委託業者に送り込めばよい。スパイは日々生真面目な図書館員として働きながら、予約した本、貸し出し中の本のタイトルなぞをせっせと組織に報告するだろう。
考えてみれば、これは別に委託・指定管理を導入した図書館のみの問題ではないし、委託・指定管理のスタッフのみの問題でもない。スパイなどというものは、おおむね一生をそのためにささげるものだから。


それにしても、私の予約情報や貸し出し情報を一瞬でチェックできるスタッフが区内で、ざっと計算して、300人!!!。
これが気持ち悪い。
(もちろん私はほんとに恥ずかしい本は別の自治体で借りるけど。)

恋愛心理学 (図解雑学)

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もちろん私は徹底的に無名の人間なので、あまり気にすることはないのだが、たとえば、ネットで実名活動をする人が市民図書館利用者なら、その人の利用状況をフォロー?できる人間が300人(自治体の規模にもよるけど)いるということなのだ。
へたに?名前が売れている人だと「あっ、この記事のもとねたは、あの本」などと、にんまりされる可能性はじつに高い。
これって、結構いやじゃないですか?
(これは返却後の貸し出し履歴を完全消去するというやり方では解決する問題ではない)


市民図書館が本気で、個人情報の保護(利用者の秘密を守る)を考えるなら、利用者の氏名(実名)、住所、電話番号に一段高いセキュリティーをかけるべきだと思う。
現実的に個人の実名と住所と電話番号が必要になる場面は、登録時と延滞の督即時におおむね限られる。それ以外の貸し出し手続きなどに、実名が表示される必要はないはずだと思う。
なんと言うか私が新垣結衣だったら!!!。あまりにリスクが大きすぎる。住所と電話番号が、300人に知られてしまうとなると、事務所だってストップをかけるのではないかと思う。現状公共図書館が有名人お断りじゃないかといわれても、しかたがないところがある。

なんというか、私レベルの人間が、図書館のカウンター内のパソコンを使って、利用者の氏名を打ち込んで、住所から電話番号、予約状況、貸し出し状況までを、簡単に知ることができること自体、ゆるいといえば実にゆるい状況なのである。
(この場合スタッフのモラルにひたすら期待するなどというのは基本的に論外だと思う)

さて対策としては、ID番号で丸ごと処理するか、いっそ、ニックネーム!!(ピッピとかスノークとか)の使用を認めるか、あたりじゃないかと思う。新規登録時にニックネームも同時に登録するようにすればいい。
さしあたり、利用カードから、名前(実名!)を書くスペースを無くすところからはじめてもいいんじゃないか。


などと相変わらず思い付きを書き散らす今日この頃。実に水死寸前である。

追記
Guroさん。個人的な趣味でやってしまったら、実に職務規定違反だと思います。現実的にはカードを忘れた人が「仮利用カード」(氏名・住所・電話番号を紙に書いてもらう)を使って貸し出しをするときなど、氏名か電話番号から利用者の貸し出し画面にアクセスするためにあるんですけど。考えれば、仮カード自体も微妙ですけど。住所と電話番号を知っている友人に成りすますのは簡単でしょうし。そこでのチェックが緩い割には、仮カード自体は個人情報だからと書記面を下にして保管して、シュレッダーにかけることになっています。
ピリピリと緩い部分のバランスがちょっと軋んでいる気がします。
利用者の利便性を維持しながら、ガードも固い、現実的な方法があればと思います。
そういえば、むかし、とある区役所に勤めていた人から、仕事が暇なとき、転入転出簿?がしまってある部屋にいって、小中高校の同級生のその後をたどるのを楽しみの一つにしていると、きいたことがあります。今がどうかはわかりませんが。

仕事を始めてしばらくしてから、新規登録のときの館内呼び出しが名前から数字(カードを手渡しておく)に変わったんですよ(銀行や病院みたいに)。利用者からの個人情報を守るべきという指摘を受ける形で。たぶんその利用者ならやっぱりいやだと思うのですね。現行のシステム。さしあたり名前が表に出ないだけでも結構違うと思ったのですが。